鹿、イノシシ、クマ、真鴨など、柳屋(岐阜県)、比良山荘(滋賀)、丁子屋(滋賀)、仙人小屋(山梨・八ヶ岳)で、様々なジビエを食べてきました。
でも・・・・・アナグマを食べたのは初めて!
(しずみかける西日を追いかけながら、御殿場から河口湖(山梨)へ向かいます)
そもそも論、「ジビエ」というこの言葉。フレンチやイタリアンで耳にしますよね。これは、フランス語で、狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉を意味する言葉だそうです。
(今回お世話になったレストラン「TOYOSHIMA」の入り口の取ってはライフル銃が。お手洗いに入るところには鹿がいました)
一般社団法人日本ジビエ振興協会さんのオフィシャルサイトによると、「ヨーロッパでは貴族の伝統料理として古くから発展してきた食文化」「ジビエを使った料理は自分の領地で狩猟ができるような、上流階級の貴族の口にしか入らないほど貴重なもの」とのこと。
今は上流階級の人じゃなくても食べられるけど(笑)、貴重なお肉であるってとこは今も昔も変わらないですね。
(大人だけの時間が始まる)
(そして子供たちだけの時間も始まる)
「アナグマが捕れたから食べよう」と貴重なお誘いをしてくれたのが、御殿場でお肉屋さんをやっているW夫妻でした。イタリアンを営むY夫妻、そして私たちの大人6人、そしてお子さんたち5人で夕方御殿場を出発して山梨県の河口湖近くのフレンチ「TOYOSHIMA」さんへおじゃましました。
(子供専用のプレートとは言え、お肉はジビエという本格的なお料理です)
「アナグマの肉はレストランにすでに送ってある」とのことでしたので、私たちは駆けつけるだけでした。
(子供専用のプレートは、鹿の出汁を使ったミネストローネ。サラダは豊島シェフ自ら育てている野菜。ビーツのソースも色鮮やか)
さぁ、大人6人に向けてコース料理が始まりました。
茶碗蒸し
ハマグリの出汁のみで作った茶碗蒸し。青のりのおかげで海の香りがふんわりと鼻腔をくすぐります。
「TOYOSHIMA」のロゴとシェフの似顔絵(似てるし!)入りの中には、春巻きのような形をした揚げ物(だったかな?)が。モッツァレラとドライトマト。シェフはほとんど自家製の野菜を使うので、ドライトマトのトマトもご自分で。ドライトマトの甘味を感じながら、完璧なアミューズで始まりました!
「今、海ですが、標高が高くなって山に入っていきますので(=アナグマ料理ってこと)」とユーモアたっぷりな豊島シェフ。
ワカサギのマリネ
河口湖で捕れたワカサギを橙(だいだい)でビネグレートしています。ワインをたくさん飲む私たちのために、リンゴの香りを入れて甲州ワインのニュアンスに近づけているとのこと!ときどきカリっとする食感が好きでした。
柑橘と魚のお料理では、「石沢」というワインを合わせてくださいました。ワインだけだとすんなり、すっきり、本当にシンプルな味。これがマリアージュすると違うワインかのごとく、全然違う顔を見せてくれました。
紫キャベツと牡蠣
フランボワーズとラズベリーの酢で炒めた紫キャベツ(手前)。白ワインに合うんだなぁーーーー!
奥には、真っ黒な牡蠣(カキ)。「!?。牡蠣に何が起こった???」と思いましたが、これは牡蠣の働きと竹炭の働きが試された一品です。牡蠣にはニンニク、バジル、パン粉がまぶされているという絶品。ずっとこれだけで飲める。
「ここ(牡蠣)とここ(白ワイン)をずっと往復してたい」って誰かが言ってたなぁ。わかります。この一品が好きな人は間違いなくワインも大好きですね。
自家製のパン
パンをいくつ食べたか覚えてないほどたくさん食べました。とにかく、もっちり&もっちりなパン。バゲットもあればクルミが入ったパンも。
かっちょいい黒いプレートは、なんと、シェフ自身で切り出してきた岩とのこと。「なんでも、自分でやってみよう!」の若きシェフ。そういう方っておもしろい。
アナグマのラグーパスタ
モモ、腕のところを、半分は手切りをして、半分は挽いたもの。この一品が、私が初めて口にしたアナグマです。平打ちした麺にソースがよく絡み合っておいしい。アナグマのラグーは強いクセはなく、野生の香り(獣っぽさ)がほわっと味の中にまぎれていました。
アナグマのバラ肉と前足を使ってた椀もの
鹿の出汁を使って70度でアナグマの肉の筋肉をほぐしていき、焼き野菜にはイノシシの出汁を使っているとのこと。さらにアンチョビも投入することによってコクが出ています。
「フランスの猟師汁」とシェフはおっしゃっていました。
筋肉質な熊の肉と違って、アナグマでないとお肉のブロック使いはできないとのこと。やわらかく、脂に甘味がありました。どんどん食べれちゃう♡
「脂がおいしい。豚肉の脂は甘いけど、アナグマの脂にはちゃんと味があるね」「繊維の残り方が鶏肉っぽいけど、なんだろう?この食べたことない感じ」「ナッツ感ってこういうこと?アーモンドだね。ピスタチオではないね」「ほんとうに臭みがない」などなど、たった一皿のうちに、食材に関する感想が豊かに広がっていきました。
食のプロと一緒に食事に行くとおもしろいのが、こういう瞬間。私よりも味覚が格段に繊細なので、普段、私ひとりで食事に行っても感じ取ることのできない味を教えてもらえます。「甘いだけじゃない脂の味」「ナッツ感」は実際に食べてみないとわからない味覚でした。
赤ワインで煮込んだアナグマ
脂の多いところなので唐辛子を効かせている。作ってから3〜4年たつ唐辛子で、ピマンデスプレットといバスクあたりで作られている唐辛子とのこと。ちょっとスパイシーというか、ピリッとして美味。
途中、春菊とごま油のソースも色鮮やかなグリーン色を添えてくれました。
アナグマのロース ふき味噌を添えて
奥が首ロース。手前が頭のロース。やわらかいのに、かなり噛み応えがあるという、初めて遭遇するお肉の食感。蕗(ふき)は自ら採りに行っており、「動物が採るか、私が採るか、の世界です(笑)」とのこと。鹿の出汁で炊いて、鹿味噌とフキノトウを合わせて作ったふき味噌でした。
豊島シェフ自ら狩猟に入られるので、その話がおもしろい。押しつけがましくなく専門性が高いことを語れる人っていいよね。明るく、朗らかに、でも「やってることは、やってるで!」って方でした。
デセールは・・・・
小麦粉を使っていないショコラ
焼バナナは砂糖を加えてキャラメリーゼ
甘酢を発酵させてつくられたアイス
最後までおいしく頂きました!
今回は5人のお子さんたち(小学生)に先に食べてもらい、大人の料理がスタートするという段取り。「いいな」と思ったのが、子供だからと言って手を抜かないジビエ料理が用意されたこと、そして、大人たちには扉全開の個室でワインと共にコース料理がふるまわれました。
コース料理も、ひとくちずつお子さんを個室に呼んで食べさせる、食べ終わったらサッと出て行ってゲームに戻ったり、5人でワイワイしたり(ときどきケンカが始まったりw)。「うちの子、おいしかったら歌いだすんですよ」って言っていたはしから歌声らしきものが聞こえてきたり(笑)。
みんながお食事どころに行き慣れているのか、大人と子供が夜の食事を楽しむのにあたって、誰もムリしない自然体な感じがいいなぁ、と思いました。
今回は豊島シェフと知り合いだったW夫妻が、アナグマのお肉を持ち込み&お店を貸し切りと言う形で実現したコースメニューでした。お子様たちのプレートも含めて通常メニューとは違う可能性もありますので、お料理やサービス内容に関しての可否は、事前にお店にお問い合わせしてみてくださいね〜!
TOYOSHIMA
住所:山梨県南都留郡富士河口湖町船津3681‐2
電話:0555‐75‐0850